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山の回想録 -谷川岳(2)

ロッククライミング
(一ノ倉沢 南稜フランケダイレクトルート)
日本三大岩場
 どうも、日本は三大XXというのが多く、この谷川岳にも剣岳や穂高岳に並びこの、三大岩場の一つと数えられています。中でも一ノ倉沢は、余りにも有名で他の三大岩場の山域と違って、以前は車で出合まで気軽に行くことができたため(最近の事情は余り良く分かりませんが。。。)、観光名所の一つとして多くの一般の方が岩壁を間近に見ることができました。(今でも多分気軽に行けると思います。)

 谷川岳には他にも、幽ノ沢にも大きな壁があって、登攀の対象にされますが、一ノ倉沢に比べると訪れる人は格段に少なく、ルートも不明瞭な所が多いと思います。マチガ沢もある意味登攀の対象なのでしょうが、沢登りの様な要素が強いようで、私は実際に登攀したことはありませんでした。
 前回書きましたが、「魔の山」の異名の通り事故も多く、こうした一ノ倉岳の東面の沢や、谷川岳南面の沢は、群馬県の条例で危険地区に指定されていて、登山届けを出さないと入山できない様になっています。一般の人は事前に登山届けを提出して許可を取らないと入山できません。
 指定の山岳団体の会員は所属団体の会長の許可で当日届けを出すだけで入山できる仕組みになっています。

(一ノ倉沢 南稜フランケダイレクトルートを登る、右側に見えるのは変形チムニー)
一ノ倉沢
 やはり、一番多く通ったのは一ノ倉沢で、一番最初に登った大きな岩登りのルートも一ノ倉沢でした。岩登りは危険が伴うのと、ある程度基本的な技術が必要なため、通常はいきなり大きなルートに行くのではなく、いわゆる「ゲレンデ」と呼ばれる小さな岩場で、基本的な訓練をして、大きなルートに望むのが一般的です。「ゲレンデ」は、群馬県にある榛名山の黒岩などによく行って練習しました。
 ある年、仲間が穂高の滝谷に入るという事で、その練習につきあって、学生時代の夏休みに連日ゲレンデに通って、練習した事である程度登れるようになりました。本番の穂高には参加しませんでしたが、直前の練習として、埼玉県にある二子山という石灰岩の山に行って始めて長いルートを登りました。その翌年、たまたま先輩に誘われて一ノ倉デビューを飾ったのでした。
 その時は人気の高い烏帽子沢奥壁の中央カンテを登って、そのまま南稜を下降して、再び南稜を登ってそのまま、一ノ倉尾根をたどって国境稜線(群馬県と新潟県の県境)に抜けて西黒尾根を下山しました。やはり、初めてのデビュー戦は夢中で登った事もあって、あまり恐怖や緊張を感じる事無くあっという間の出来事のように終わってしまいました。
 その後もいろいろ一ノ倉のルートを行きましたが、それでもその最初の時に比べると何回も行った為か日常茶飯事になってしまい、それ以上の感動を味わう事もあまりなくなって、もっと大きなルートを登るための通過点という感じになっていました。実際は一ノ倉沢には難しいルートも多数存在して、そういったところも目指せばいいのでしょうが、これらのルートは極端に難易度が高いものも多く、それこそ、危険の要因が高すぎるので、結局触らずに終わったルートが多く、行くルートがマンネリ化したのもそう思った一因だと思います。
 一ノ倉沢のアプローチは、テールリッジと呼ばれるやや急な岩稜を詰めるのですが、春から初夏にかけては沢にびっしり雪が残り、ヒョングリの滝と呼ばれる滝も完全に埋まっているので、雪通しに比較的楽に取り付けますが、雪が解けるにつれて、滝を迂回しなければならず、だんだん時間をとられるようになります。テールリッジも途中の大きな松の木の下は、岩が脆く崩落なども起きていて意外に危険な場所で、所属していた会では無理をしないでちゃんとロープを出して登るように指導されていましたが、実際この場所では過去に多くの事故も起きているようでした。
 国境稜線に抜ける場合も途中5ルンゼの頭も岩が脆く、ロープを出した方が安全のようです。
 一ノ倉沢は、人気のあるポピュラーなルートは支点もしっかりしていて、ルートも分かりやすくある程度訓練すれば比較的容易に登れます。ハーケンやボルトを追っていくと登れてしまうところもあって、鉄の道と揶揄される事も多いように思います。
 いずれにしても、出合から見る一ノ倉沢は日本離れした絶景で、ぜひ一度ごらんになることを進めます。(JRの大清水のポスターの場所です)

幽ノ沢
 一ノ倉沢に対して幽ノ沢は人も少なく静かで、当時は車で一ノ倉沢出合まで行けたのに対し、幽ノ沢は一ノ倉沢出合から小一時間歩かなければいけない事もあって、不遇の谷のイメージがありました。実際登った回数も一ノ倉沢に比べれば格段に少なかったです。
 ルートも不明瞭なところが多く、支点も少ないし、古くなって「腐った」物も多く、自分でハーケンやボルトを打ったりするなどして、ルートを延ばす必要がありました。人も少ないので浮石も多く、気をつけないと落石を起こしやすいところもあって、技術的な難易度は一ノ倉沢と同じくらいのルートでも総合的にはやや難易度が高い印象がありました。
 幽ノ沢では、1度トップで墜落した苦い経験があって、数は少ない物の印象的には一ノ倉沢より記憶にはっきり残っている所もあります。このときは、トップで登っていてほぼ垂直な部分を越えるためにアブミという縄梯子の様なものを支点にかけてそれに足をかけて登る「人工登攀」と呼ばれる登り方をしていました。(これは、フリークライミングに対する言葉で、フリークライミングはそういった人工的な足がかり、手がかりを使わないで安全確保の最小限の道具で登るのですが、人工登攀はそういった縄梯子を使ったり、支点を手がかりにして登る方法です。フリークライミングをよく道具を使わないという場合がありますが、これはあまり適切な表現ではないように思います。)
 そんな最中してんをかけていた岩がそのまま剥がれて落ちてしまったわけです。たまたまロープをクリップする前でしかも、岩の下側に体が入らなかったので、打撲くらいの怪我ですみましたが、ロープをクリップしてたり、岩の下側だったら、大怪我か下手をすれば死んでいた事故でした。
 その後自力でそのまま下山して、病院に行きましたが全治数週間の打撲ですみました。
 山登りも、エスカレートするとそうした危険な場面に会う機会は確かに増える気がします。でも、こんな言い方をするとお叱りを受けるかもしれませんが「運」よるものも大きいように思えます。
 そして、ある程度は回避できると思っています。それにしても、実際「死にそこねた」事が過去に何回もあったので、やっぱり危ないのかも。。。。

 岩登り編はこのあたりで終わりにします。
(つづく)

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