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Mt. Whitney登山を科学する (2) ~移動時間は同じ!?

トレールキャンプ



Mt. Whitney登山のデータ解析と比較
今日は、過去のMt. Whitneyの登山記録をもう少し詳しく見てみる事にします。データが現存するMt. WhitneyGPSの登山記録は、20118月、201210月、20149月、20158月の4回分になります。まずは、私自身のこの4回の記録について概要を見ていきたいと思います。
各山行の概要
20118月は、12日で登山しています。第1日目は、Whitney Portalを夜明けと共に出発して、Trail Campでテントを設営後にそのまま頂上の往復を行って、翌日にTrail Campから下山しています。この年の記録には心拍数のデータはありません。また、Trail Campから下山のデータもありません。この登山の感覚的な記憶は、Outpost CampTrail Campの間の後半は、けっこうバテテ、途中何度も立ち止まりながら登って、頂上の往復も、主稜線に出てから結構立ち止まりながら歩いていて、全体的に「きつかった」印象が強いです。ただし、この年は登山前に、2回のフルマラソンを走っているのでそのためのトレーニングで体力的には比較的充実した状態での登山でした。
201210月は、登山経験の少ない友人と23日で登山しています。第1日目は、Whitney PortalからTrail Campまで。第2日目に、頂上往復、第3日目にTrail Campから下山しています。この年の記録は、第3日目のTrail Campからの下山データはありません。この年は、同行した友人が余り山に慣れていない事もあったので、ペースはかなり抑えて歩いています。少し間隔がひらきすぎた時は立ち止まって待ったりもしていた事もあって、かなり楽に登れた印象が強いです。
20149月と20158月は、ある程度登山経験のある友人と12日で登山しています。第1日目は、Whitney PortalからTrail Campまで。第2日目は頂上を往復した後にテントを撤収して下山しています。この辺りから、登山中の心拍数を気にしながら登るようになっています。登山中の心拍数が極端に高くならないように、心拍数を見ながらペースを調節して登るようになった登山です。
過去の登山記録
GPSによる記録はあくまで参考という感じで使い始めたので、基本的には従来からの一般的な方法で、ノートに主要地点の到着時刻などを記録して、ブログに投稿するような形で、あまり詳しくGPSのデータを見ていませんでした。しかし、実際は記録の取り方にも問題があって、歩き始める時刻で記録していたので、車を停める場所が違うと山行によって微妙に記録のある場所が異なるので余り比較には向かないデータでした。
そこで、今回は、かねてからこのブログで紹介しているように、GPSのデータをソフトウエアで処理してもう少し近い条件での比較を試みたわけです。
データ処理の仮定
幾つかデータ処理を行う上での仮定を書いておきます。GPSの位置情報は当然誤差を伴いますので、これを基に計算する距離の情報や標高の情報には誤差が含まれる事になりますが、今回はこの誤差は無視してデータの評価を行っています。いろいろ考えたのですが、特異点を完全に取り除くのは難しいので、生のGPSのデータを大体1分毎に、データの平均を取って誤差の影響を取り除いてはいますが、完全ではありません。また、位置情報の誤差はランダムの可能性が高く、正しい情報にオフセットがついたような性質のデータなので、実際の距離では、10%を越える誤差もありえると考えられます。また、緯度、経度から距離を計算する際にも実際の距離との間で誤差が生まれますが、これも基本的には無視しています。
心拍数のデータに関しては、ある程度正確だと思われますが、実際の値に対してオフセットしている可能性は残っていますのであくまで相対的な比較に使うものとしています。
データ処理の方法
登山のデータを秒単位で解析する意味は余りないので、データは約1分間隔でその中のデータの平均を取って1分ごとのデータで処理しています。これである程度は特異点の影響を少なくする事は可能だと思いますが、完全ではありません。
基準点の定義は、地図から緯度、経度情報を抽出して、この緯度とGPSの位置情報の差が50m以内の点で一番最初に現れるレコードをその地点の記録として扱っています。
また、単位時間当たりの移動量が1分あたり20m以下のレコード(約1分毎に処理し直した)を休憩とみなして、行動中の休憩時間の評価に使っています。
まずは、これを基に各年の行動の概要を出してみました。ここまでの処理は、TCX形式のファイル、またはGPX形式のファイルからほぼ自動で処理できるようにプログラムを作成して処理しています。今回の自分のデータは、距離に関してはTCXファイルに含まれる距離を使用しています。ただし、地点の特定には位置情報を使用しています。実際に位置情報から計算した距離と、TCXファイルの距離は一致しないので、GPS機器が何らかの補正をかけていると思われます。恐らく、この値の方が誤差が少ないと考えられるので、データの距離情報はこちらのデータを使う事にしました。
基準地点は、Mt. Whitney Trailの登山なので、登山口の、「Whitney Portal」、「Lone Pine Lakeへの分岐点」、「Outpost Camp」、「Trail Camp」、「Trail Crest」、「John Muir Trailの分岐点」、「頂上」でデータを抜き出しています。下りのデータは揃っていないので、「Whitney Portal」から頂上を経て「Trail Camp」に戻ってくるまでのデータで比較を行いました。
データを見る前に、誤差の概算をします。まず、時間の情報は分単位で使っているので、誤差は殆ど無いと考えて問題ないかと思います。しかしながら、位置情報には誤差があり、正確な誤差の評価は難しいですが、一つの例として、2014年のデータでNorth Forkへの分岐点が抽出されませんでした。他の年のデータでは抽出されているので、位置の許容誤差を100mまで緩和しても抽出されませんでした。従って、100m以上の誤差が出る事があるのは明白です。仮に誤差が100mとして、位置情報に50mの許容誤差として入れているので最悪半径150mの範囲が、同じ地点として抽出される可能性があります。つまり、同一点として抽出された点が300m以上離れた点である可能性があります。そうなると、移動のスピードによって所要時間に誤差を含む可能性がある事になります。スピードは、登りでは遅く、一定ではないので評価は難しいですが、大まかに1秒当たり0.7mの速度で移動するとすると、300mの移動には約429秒(7.1分)程かかる事になります。そうなると、概算の誤差として、5分から10分程度の誤差を含む可能性があるという事になります。


所要時間 (時間:分)
休憩 (分)
移動時間 (時間:分)
2011
2012
2014
2015
2011
2012
2014
2015
2011
2012
2014
2015
Whitney Portal
0:00
0:00
0:00
0:00
0
0
0
0
0:00
0:00
0:00
0:00
Lone Pine Lake
1:50
2:00
1:45
1:51
4
5
6
7
1:46
1:55
1:39
1:43
Outpost Camp
0:31
0:38
0:30
0:30
1
2
0
0
0:30
0:36
0:30
0:30
Trail Camp
2:09
3:07
2:23
2:05
19
41
28
17
1:50
2:26
1:55
1:48
Trail Crest
2:17
2:24
2:07
1:41
9
25
7
1
2:08
1:59
2:00
1:40
John Muir Trail
0:12
0:08
0:14
0:07
4
1
6
0
0:08
0:07
0:08
0:07
Summit
1:51
1:39
1:29
1:28
19
7
4
1
1:32
1:32
1:25
1:27
John Muir Trail
1:22
1:50
1:22
1:35
23
25
13
11
0:59
1:25
1:09
1:24
Trail Crest
0:07
0:08
0:07
0:07
1
0
0
0
0:07
0:08
0:07
0:07
Trail Camp
1:05
1:27
1:04
1:16
1
14
3
1
1:04
1:13
1:01
1:15

そういう観点でこのデータを見ると、一つ面白い事を発見しました。実際の移動時間、これは所要時間から休憩時間を引いた値になりますが、この時間が余り変わらないというのが分かります。2012年のデータは、自分のペースではなく、同行した友人のペースに合わせている事もあるので、時間が余計にかかっていますが、その他はほぼ自分のペースで歩いているので、この仮説は成り立つように思います。実際、2011年はややハイペースで歩いていたと思いますが、その分休憩時間が多くなっています。しかも、この年は非常にきつく感じたわけなので、実はペースを落として歩いた方が効率がよく登れると考えられます。
まずは、今日はこの辺で、続きはまた後日書くことにします。
(つづく)



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