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Mt. Whitney 登山を科学する (6) ~ 上限心拍数を考える その1

Outpost Camp からTrail Camp の速度の推移
(縦軸:秒速[m/sec],横軸:標高[m])



目標となる上限の心拍数を決めて行動する事には、特に4,000m前後の標高で行動する場合はどうやらメリットがありそうだという事は何となく判って頂けたかと思います。そこで、これから何回かに分けて目標となる心拍数のあり方について見ていく事にします。

昨年の登山の2つの区間のデータを見てみる
まずは、昨年8月の私の登山データをもう一度見てみる事にします。
今回は、Outpost CampTrail Campの間と、Trail Campと頂上の間の登りの区間で比較をしていきます。
まずは、スピードを見てみます。冒頭のグラフが、Outpost Camp からTrail Campの区間の測度の推移です。そして、下のグラフが、Trail CampからSummitの区間の測度の推移になります。




Trail Camp からSummit の速度の推移
(縦軸:秒速[m/sec],横軸:標高[m])
 


概ね、秒速0.6m程度の速度で歩いているのが読み取れます。若干、Trail Camp ~ Summitが早い感じですが大きな差はありません。
 
次に、心拍数の平均値を見てみる事にします。以前にも書きましたが、この年の登山では、Trail Campまでの登りは、上限心拍数を毎分160回、Trail Campから頂上までの登りは、上限心拍数を毎分140回から145回に設定して、ペースを調整しながら登りました。

Outpost Camp からTrail Camp の心拍数の推移
(縦軸:心拍数[bpm],横軸:標高[m])

Trail Camp からSummit の心拍数の推移
(縦軸:心拍数[bpm],横軸:標高[m])


Outpost Camp ~ Trail Campの方は毎分160回に近い毎分150回台で推移しているのに対して、Trail Camp ~ Summitの方は概ね毎分130回前後で推移しているのが分かるかと思います。概ね、設定の上限心拍数の範囲で登山しているわけです。ペースが似た様な値に対して、心拍数は大きく違ってきています。これは、前にも触れていますが、Outpost Camp ~ Trail Camp間は宿泊の装備を持って登っているのに対して、Trail Camp ~ Summit間は最小限の装備で登っていますので、荷物の量が大きく違っています。また、標高は明らかに後者の方が高くなっています。このデータを見て少し考えてみると面白い事がわかってきます。



登山中の運動強度を決めるのに、幾つかの要因があります。トレールの傾斜、酸素の量、荷物の量、そしてペース(速度)が大きな要因です。このうち、酸素の量と、トレールの傾斜は変える事ができないので、登山者が調整できる要因は、荷物の量と、ペースという事になります。Mt. Whitney Trailの場合、トレールの傾斜はほぼ一定を保つように作られており、大差がないと考えられます。そうするとこの2つの心拍数の差は、高度と荷物の量によって決まってくるはずです。しかし、高度の面では、明らかに、Trail Camp ~ Summitの区間の方が高い場所を歩いているのは明らかです。そうなると、この差は、明らかに荷物の量の差によって起きていると考えられます。



以前の投稿で、心拍数の上限値毎分160回は若干高めだったと結論づけていますが、この心拍数を選んだのには自分なりに理由がありました。


上限心拍数「毎分160回」はどこからきたか?
1つは、過去のMt. Whitney の登山経験、データから来たのが1つです。過去の登山では心拍数が、毎分160回を越えても頑張って登っていて、非常に苦しかったというのがあって、ではどこまで下げられるかと考えた時に、以前の登山では心拍数が毎分160回を越えると、比較的短い時間で休憩を入れているという点に着目して、毎分160回以下に抑えていれば、比較的休憩を入れなくても歩き続けるだろうという推測の基、設定していました。

もう1点は、過去の私のフルマラソンのデータで、平均の心拍数が概ね160回台だった点を考慮しています。これは、レースですので、自己記録を狙ってある程度、追い込んでいるのでこの値になっていますが、それよりもやや低めにして、レース時のようには追い込まないという仮定の基に上記の毎分160回の妥当性があると考えたからです。勿論、平均が毎分160回という事は、レース時の最大心拍数はさらに高い値で、私自身の最大心拍数と推定される毎分180回近い値になっていました。しかしながら、上限を毎分160回に抑えることで、実際の平均の心拍数はもう少し低いところに行くと考えれば、毎分160回の上限というのは、それなりに妥当な値だと考えました。



Trail Camp ~ Summit区間の上限心拍数
一方で、Trail Camp ~ Summitの上限心拍数は、昨年の登山では概ね毎分140回から145回程度に設定して歩いています。理由は、以前にも書きましたが、休憩時間を抑えるためが理由でした。実際、昨年の登山では大きな休憩を入れずに、頂上まで歩き通す事ができました。
そう考えると、一般的に上限心拍数は毎分140~145回位が妥当ではないかと考えられ、以前の投稿で私も、Outpost Camp ~ Trail Campの区間でも毎分160回より低い値がだとだろうと結論付けたわけです。恐らく、毎分150回前後で休憩を入れるのが良いと考えたわけです。

今回は昨年の登山におけるデータと、昨年の登山の上限心拍数を決めた理由について書いてみました。次回は、これらのデータを見て、妥当な上限心拍数は何かを考えてみたいと思います。

(つづく)


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