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山の回想録 -剣岳(3) 八ツ峰-4

先頭で登る!
(八ツ峰 V峰からの懸垂下降)


冬に登るために。。。
 暗黙の了解のようなものも出来ていて、春は八ツ峰に通う事が多くなりました。ある年は天候と日程の関係で八ツ峰の予定で入山しましたが、転進して源治郎に行った年もありましたが、概ね八ツ峰を目標にしていました。冬は西面の小窓尾根に行ったりしていました。

 この年も早い時期の入山だったので先頭で登ることになりました。今回は少し順を追ってルートの写真を紹介します。もうだいぶ前の写真ですが結構いろいろな場所での写真が残っていました。

 まずは、I峰III稜の尾根を取り付きから忠実につめていくと、大きな岩峰の基部に出ますが、多くの場合ここからロープをつけて岩峰の基部を左側から巻きながら左側に入っているルンゼ(スベリダイルンゼ)に入ります。この年は降雪後だったので木に雪がついて冬みたいな景色になっていました。





 そのまま斜めにあがって小さな尾根を乗り越すとルンゼに入ります。以外に急な斜面ですが、笹や木につかまりながら行けるので途中に支点を取れるのでロープの流れに気をつけてロープを伸ばします。 (左の写真)

 ルンゼは幅2~3位の狭いルンゼで上部に行くとやや広くなります。一応雪崩を警戒して、ルンゼの端にトレースをつけました。このルンゼを登り切ると、前回の回収山行でテントを張ったP3手前の少し傾斜の落ちたところに出ます。










 そこから尾根の左側から斜めに登ってP3の手前の露岩を目指します。
 左の写真は、固定したロープを通過している所です。斜度があるので、雪の量は春なのでそれほど深くは無いのですが、股から腰ぐらいまでのラッセルでした。この時は3人パーティだったので、トップが登った後にロープを固定して2番手の人はユマールを使って固定ロープを登りました。ラストは確保してもらって登りました。危険な場所は一人ずつの通過になるので時間がかかります。
 写真だと傾斜がゆるそうに見えますが実際は結構な急斜面です。

 上の写真の中央上部に見えているのが露岩で、ほんの数歩ですが、ちょっと高度感があって、岩が出ているので慎重に登ります。
 その岩を越えると左の写真のようなナイフエッジの尾根になります。八ツ峰も春とは言え3回目なので少しは慣れてきて、この時はトップで登る事も多くなりました。でも、一旦III稜に取り付くと緊張の連続で気は抜けません。
 2番手は固定したロープで登ってくるので、後続の登攀を撮影しながら支点のピッケルを踏んでいました。











テント場
 この日はP3で時間切れでここでテントを張ることになりました。結構狭い場所ですが雪を崩して下をならしてテントを張りました。作業中も落ちたら危険なのでロープを固定して作業しました。
 一度取り付くと中々安全で広い場所があるわけでないので雪崩の危険の少ない場所を選んでこういう場所でもテントを張るのが現実です。
 もちろん用をたすのもテントの隣でロープに体を確保してしないといけません。。。。夜のトイレは危険なんです。。。そんなわけで翌日テントを片付けたあとそこで用をたす事が多かった気がします。

翌日も緊張の連続
 翌日も先頭でルートを延ばします。写真はP4の登りで広い急な雪の斜面です。背後の小ピークというかナイフエッジが前日のテント場です。微妙に残るテントの後が何となく分かりますが。遠くからみると結構すごい場所にテントを張っていたのが分かるかと思います。
 写真にロープやらカメラケースやら余計な物が写りこんでいると思いますが、余り気にしないで見てください。結構厳しい状況で撮影しているので、あまり写真のクオリティーに気を使う余裕がありませんでした。
 P4の頂上ややや広くなっていて時間があれば、こちらの峰が安全なテント場所になります。
 さて、そのあと細い雪混じりの岩稜のP5を登ってルートを延ばしますが、あまりはかどりません。走行しているうちに後続のパーティに追いつかれました。実はこのパーティは知り合いで、初めての春の八ツ峰の時に前を登っていたパーティであの時は大変「お世話」になった借りがありました。
 今回はてこずっている間に第2プラトーあたりで追いつかれて、その後、交代でラッセルをしてルートを延ばしました。

その日はI峰を越えたところで隣同士でテントを張って翌日、主稜の下半を交代でルート工作して伸ばしました、さすがに1つのパーティがロープを固定してそのロープを使って2パーティが通過して、その間に先に通過したメンバーで先のルートを延ばすことができるので、効率が一気にアップして以外に早い時間にV-VIのコルに着きました。
 でも予報では天気は下り坂でかつ大荒れの天気と言うことで上部に突っ込むのはやめて早々に長治郎谷に下山という事になりました。
 この時も翌日以降天気は予報どおり崩れ、VI峰の登りで雪崩の事故があったようです。春とは言え天気が崩れるとあなどれません。
 私たちは大町で温泉に使って山の疲れを落として帰宅しました。
(写真はV峰の頂上に向かう少し細くなった尾根です。)

春とは言え中々登れない!
 さて、春の挑戦も今回で3回目になりますが、実際に上部まで抜けたのはまだ1回だけで、なかなか足が揃ったパーティでも十分な日程と天気に恵まれないと5月でも簡単に登れない事が、はっきりと分かるようになりました。アプローチも長く、天気ももっと悪くなる冬は条件は厳しく本当に簡単には登れない山です。それを考えると、最初の冬の撤退は本当に惜しいことをしたのかもと思えてくるのでした。
(つづく)

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