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山の回想録 -剣岳(3) 八ツ峰-2

ラッセル泥棒!?
八ツ峰主稜 VI峰の登り (1989年5月)
八ツ峰縦走
 さすがに、最初の冬の敗退は自分でも情けなく、まずは春の八ツ峰に登ってみる事になりました。
 春は、黒部・立山アルペンルートで黒部ダムまで入れるので、1日でハシゴ谷乗越もしくは、剣沢の真砂沢の小屋付近まで入れます。この時は、確かハシゴ谷乗越でテントを張って翌日剣沢に下りて取り付いたと思います。

階段登り
 実際の登攀はというとこの時は実際はいわゆる「階段登り」に終始しました。2日位だと思うのですが、知り合いの山岳会が入っていて、しっかりトレースというかステップをつけてくれたおかげで後から登る私たちのパーティはそのステップをたどるだけで楽に登れました。実際ロープを出したのはI峰の登り(III稜から)では、P3の露岩の部分だけで後は、ノーザイルで特に怖い思いをする事なく登りきってしまいました。
 主稜に出てからも、I峰を除くメジャーなピークで懸垂下降のためロープを使った以外は特に悪い場所もなく、一気にV-VIのコルまで行くことができました。

そのときの感想は。。。
「八ツ峰。。。そんなに難しくはないかな??」という印象でした。
当然、先行していたパーティは知り合いでしたので、トランシーバーで交信すると、殆どロープをつけっぱなしで、「悪かった」と言っていました。彼らにしてみれば、1日でV-VIのコルというのは、「えっ!」って感じだったと思います。下降にしても、下降の為の支点は全て掘り出されていて、簡単に見つけることもできたし、特に苦労のない登山でした。

翌日はそのまま、VI峰の登りを経て一気に池ノ谷乗越に出て、そのまま長治郎谷を下降して、真砂沢にテントを張りました、そこをベースに翌日は源治郎尾根を一日で登りきって、その日のうちに黒部ダムに下山したほど状態は良かったと思います。
(懸垂下降の支点をセットするリーダー)

ラッセル泥棒
 登山者の間でよく使われる言葉で「ラッセル泥棒」という言葉があります。ラッセルは文字通り雪をかき分けて進むことで、雪が深いと相当の体力を消耗します。後からかき分けた後を進むのはかなり楽になります。あとは、トレースがあると大抵の場合、あまり考えずに(ルートファインディングをあまり意識せずに)進めます。そういう意味で、この登山は自分たちはある意味ラッセル泥棒だったと思います。ただ、このケースは、前に出ようにも日程的に差が大きすぎて、追いつくことが出来なかったので、意図的に前に出ないのとは違ってやむを得ないところもありました。

 春とは言え、末端からの八ツ峰の縦走は決して易しいものでは無いと思います。でも、トレースが入った後に行けば、比較的簡単に登れてしまうのが現実です。おかげで自身がついたともいえますが、反面、間違った印象を与えてしまうともいえます。
 当時の私には、冬でも登れるかも(登れたかも)と思っていた所は多々あったと思います。

 いずれにしても、ある意味、自信をつけた登山であったと思います。

そして。。。
 そして、その冬ですが私の山岳会としては合宿で八ツ峰ではなく小窓尾根に行くことになりました。ところが、春に先行していたパーティの山岳会と合同で、所属していた山岳会からも八ツ峰に参加することになって、別々に入山することとなりました。八ツ峰パーティは精鋭揃いの強力パーティで当然みんな八ツ峰をおとしてくると思っていました。。。。
 実際は、小窓尾根の回想で触れましたが、私たちはコッフェルのお湯をこぼして火傷の負傷者を出して馬場島に下山、富山から夜行電車で家に帰ってお正月番組を見ていました。
 そのとき、ニュースで、八ツ峰のパーティがアマチュア無線で救助を要請したというニュースが流れました。ほぼ同時に家の電話が鳴って、関係山岳会で救助隊を組織して剣に向かうからとのことで、まだ乾くか乾かないような装備を車に突っ込んでまずは集合場所の家に行きました。そこから車数台に分乗して、一路、富山県上市町の伊折に逆戻りすることとなったのです。
 この後の救助のエピーソードはまた別の回想録で詳しく書くこととしますが、この「事件」は結局、八ツ峰からヘリコプターによるピックアップという形で幕を閉じる事になりました。

次の八ツ峰登攀。。。
 そんな事件があって、ヘリによるピックアップが急だったため、彼らもテントなどを撤収する時間が無かった様で、一部の装備と、テントが現場に残されたました。そこで、それらの回収の為、春に再び八ツ峰に一緒に登ることになったわけです。これが、私の八ツ峰第3章になります。
 また続きは後日書きます。

(つづく)

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