2020年10月7日
登山と心拍数で高山病対策は可能か?
日本一標高の高い山「富士山」、その標高は3776mです。 富士山では、殆どの人に高山病の症状が出る事で知られています。 この記事では、富士山に登る際に、上手く登山中の心拍数を利用すると高山病対策になるという話です。
実は高山病を防ぐことはできません!
まず最初に、事実をお話ししなくてはいけません! 実は、心拍数を利用しても高山病を防ぐことはできません。いずれにしても*1日から2日**で富士山と同じような標高の山に登る場合、高山病の症状はほぼ必ず出るという事は覚悟して頂きたいという事です。
それでは、富士登山に心拍数を使っても意味がないと言われるかもしれません。実は、高山病予防はできませんが、高山病対策はある程度可能だからです。
高山病とは?
車で標高が低い所から高い所に移動すると、お菓子の袋が大きく膨れたのを見たことがあるかと思います。これは、気圧の変化が起きているために起こります。標高が上がると気圧が下がる事はよく知られています。水の沸騰する温度も下がるというのは有名な話です。
これはどういうことかというと、袋の中の空気は同じ量(難しく言えば、酸素分子の数は同じ)なのに気圧が下がる事で体積が増えているという事です。言い換えると同じ退席中にある酸素の量が減る事になります。(酸素の密度が下がるという事です。)
これを人間の肺で考えると、肺の体積は同じ人ならば同じです。つまり、標高が高くなると一度の呼吸で取り込める酸素の量が減少する事になります。これをよく空気が薄くなると表現したりします。
一方で、登山などの激しい運動をするには、その負荷に応じた酸素が必要になります。一度の呼吸で取り込める酸素の量が減ればそれを補うために呼吸の数を増やす必要があります。
体内に取り込まれた酸素は、肺から血液を通して体に供給されます。しかし、同じ血液の流量で運べる酸素の量は限られているため、肺での酸素の取り込み効率が落ちる分、心拍数を上げないと必要な酸素を体に供給できなくなります。これが標高の高い所に行くと普段より心拍数が高くなる原因になっています。
運動で一時的に不足した酸素は体内に予め余分にある酸素で賄われますが、長時間にわたって酸素が不足すると体の機能が低下します。これが高山病の原因と言われています。
高度に慣れる事はある程度可能!
標高が高い所に長時間滞在すると、体が酸素を運ぶ能力を改善するような反応が起きます。これを高所順応と呼ばれていてある程度の標高までは順化できるとされています。高度順応が進めば、心拍数も通常の生活時に近い物になります。しかし、この順化には数日かかるのが普通です。従って、富士山の登山の様にせいぜい1日から2日で登る場合、体が高度順応をする前に登山が終わってしまいます。
酸素が少ない状態が続くので短期の登山では高山病の症状を完全に防ぐことは難しくなります。 これが心拍数を利用しても高山病を防ぐことはできないと書いた理由です。
高山病も問題ですが、実はバテている!
しかし、心拍数を利用する事で対策はあると書いたのにも理由があります。 標高が3000mから4000mの登山が普通よりつらいのは、実はバテているからというのが実に多いからです。理由は簡単で単にオーバーペースだからです。
実は、このオーバーペースを引き起こす原因の一つは高度だからです。
何故オーバーペースになるか?
原因はペース感覚の麻痺にあります。登山の場合標高の低いところあら登って徐々に標高を上げて行くのが普通です。実際の登山中の心拍数を見ていると、標高3000m位から普段よりは心拍数が高くなります。ただし、この時点では、体には高山病の自覚症状がまだないのが普通です。これが問題の原因になっています。
自覚症状がないので、歩くペースは普段の標高が低い山を歩く時の感覚で行動してしまうからです。実際にこの時の心拍数は、心拍数ゾーンで3の後半から4になっていることも多く、明らかにオーバーペースの心拍数になっています。
普段の登山でも同じですが、オーバーペースは維持できません。つまり、いつか必ずバテるという結果が待っています。
しかし、こうした標高での経験が多い登山者の場合、よく言われる意識的にゆっくり歩くと高山病に効果があるという歩き方をする人が多くなります。そうすると、心拍数が必然的に抑えられるのでバテにくくなります。
バテにくくなっているだけで、高山病の症状はさけられない!
実際にバテにくくなているので、高山病に効果がある様に感じるだけで、実際は高山病事態は予防できていません。しかし、バテないので楽に登れるわけです。 これを、心拍数という基準を使って、ペースを調整すれば、バテないペースを見つけられるというのが、高山病対策というわけです。実際は高所対策という方が言葉的には正しい使いかたかもしれません。
オーバーペースの場合、必要以上に酸素を消費するわけですから、高山病の症状も進みやすいのはある程度事実だと考えられます。そう考えれば、適正ペースを維持するのは高山病対策と言っても良いのかなと思います。
まとめ
4000m前後の山に短期間で登山する場合の対策は、心拍数を見ながら適正心拍数を維持するように歩きます。これで、オーバーペースによるバテをある程度防ぐことができます。
4000m前後の登山が辛く感じるのは、標高による体の影響がわからないためにペース感覚が麻痺することでバテやすくなるからです。
心拍数という客観的な指標を利用する事で、感覚ではつかみにくい体への影響を自覚しながら登山する事がポイントです。
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