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アウトドアでの通信手段を考える InReach v.s アマチュア無線

通信手段として便利なアマチュア無線ですが。。。

緊急時の通信手段という話題になったので、今日はもう少し視野を広げて「アウトドアでの通信手段」ということで、もう少し詳しく、登山やハイキング中で利用できる通信手段を見てみました。

電波の届く範囲

通信可能な範囲を決める上で需要なポイントはどこまで「電波が届くか?」だと思います。大まかにいうと、2つの要素があります。
  • 使っている周波数 (殆どは、VHF/UHFの電波を使用)
  • 発信する電波の強さ(機器の出力とアンテナの効率で決まります)
周波数に関しては、VHF/UHFの電波を使用しているので、性質は光に近く、直進性が強く基本的には見通し距離の通信になります。周波数の割り当ての詳細は国によって異なっています。

発信する電波の強さは、使用している機器の出力(空中線電力)とアンテナ(利得と指向性)によります。電波のエネルギーの大きさは、発信地点で最も高く、発信点から離れるほど伝搬による減衰で小さくなっていきます。また、地表や、建物などの構造物、木などによって反射する際にも減衰します。通常の通信は地上局同士の通信になるので、こうした障害物による影響が大きくなります。一方で衛星を経由する場合、障害物が少なくなるので、単純な伝搬による減衰が中心となるので弱い電波でも遠くに達する事が可能になります。

アンテナは、携帯機器の場合、機器に内蔵されたアンテナになるので、外部に設置するアンテナに比べて利得は小さく、機器の違いによる差は少ないと言えます。

アウトドアで利用される通信端末は?

大まかに考えれば、一般に利用されている機器は

  • 携帯電話(スマホ)
  • 衛星回線を利用した機器(InReachを含む)
  • アマチュア無線
  • 簡易無線(操作に免許が不要な物、機種によっては登録や申請が必要)
などがあります。
簡易無線は、日本では特定小電力トランシーバーと呼ばれていて、登山者やハイカーの間で特にグループ内の通信に利用される場合が多いものがあります。アメリカでは、FRS(Family Radio Service)やGSM(General Mobile Radio Service)などがあります。FRSは基本的に届出の必要はありませんが、GSMは届け出てコールサインを取得する必要があります。(GSMでの通信には、コールサインを15分後とに入れる必要があります)

携帯電話

一般的な携帯電話の出力は1W以下です、機器別の詳しいデータは公表されていませんが、インターネットに投稿されている記事を見ると200mW前後で、必要に応じて出力は変わるようになっているようです。4G LTEの出力の記載が、電波の放射による影響の評価に関する論文の中にあります。

衛星回線(イリジウム)

衛星を経由した通信には静止衛星(軌道の高度が約27000km)を使う物と、低軌道の衛星を複数使用している物があいります。一般的に使われている衛星回線は、イリジウムで、これは、軌道の高度が約781㎞の低軌道の衛星を利用しています。現在稼働している衛星は第2世代の物になります。(Wikipediaより)低軌道の衛星を使用する事で、低電力での通信が可能になっています。

最近投稿したInReachもこの衛星電話の回線を利用しています。周波数は、1.6GHz帯を利用していています。出力に関しては、InReachの仕様には書かれていませんが、インターネットの情報によると1.6W という記事がありました。

資格のいらないトランシーバー

日本の特定小電力のトランシーバーは10mWで400MHz前後の周波数を使用しています。出力が小さいので、基本的にはグループ内での通信に利用される場合がほとんどです。

アメリカのFRS(Family Radio Service)は、460MHz帯を使用していて2Wまでで、通信距離は一般的に0.5~1.5㎞とされています。(Wikipediaより)日本の特定小電力のトランシーバー同様、グループ内の通信に使われる事が多く、緊急時の通信手段として使う場合は余りありません。

GMRS (General Mobile Radio Service)では5Wまでとなっています。FRSより長距離の通信が可能になりますが、届け出てコールサインの指定を受ける必要があります。業務用の通信に使用される場合が多く、登山者や、ハイカーの仕様は余り一般的ではありません。

アマチュア無線

アウトドアで使用するようなハンディ機は、144MHz帯と440MHz帯を使っていて、一般的な出力は5~8W です。免許が必要ですが、一方で通信の一般的なオペレーションの知識を持っているため、緊急時でも効率よく通信を行う事が可能です。アメリカでは、災害時のバックアップの通信手段として平常時から組織的に訓練や中継機器の整備がされています。
国によって、免許制度が異なり、多くの場合運用先での免許や許可が必要になります。アメリカでは、日本で免許を取得して、有効なコールサインを持っている場合、日本のコールサインでの運用がアメリカでの規則に基に運用が許可されています。ただし、アメリカで免許を取得した場合、日本での視覚にかかわらず、アメリカの免許に基づく運用となります。なお、アメリカの免許は日本でも取得可能で、試験に合格すれば自動的にコールサインも発行されます。(このコールサインでの日本での運用はできません)

移動通信の手段としては、免許が必要なので一番大きな出力での運用が可能で、長距離の運用には有利になっています。

緊急時の信頼性を考えれば、InReachがベスト!

まず、緊急時の信頼性と救助の事を考えれば、間違いなく「InReach」がベストです。

衛星回線を利用しているので、基本的に空が見えていれば通信可能であるので、緊急時に直ちに通信ができる確率が他の機器に比べて高くなっています。また、捜索・救助のパッケージ(SAR)プランに加入できるので、通常高額な費用がかかる捜索・救助の費用の負担が最小限で済みます。

サービス費用は、アクティベーションの費用と、利用料(月額か年間契約)になります。料金プランはWebサイトにあります。一番安いプランは、月額14.95ドルからあって、プランによる違いは、プランに含まれるメッセージに数や、位置情報を送信する感覚などにより料金が変わってきます。追加料金を払えばブランで決まっているメッセージを超えて送信できます。一軒のテキストメッセージは160文字以内で、追加のメッセージは1件0.5ドルです。行動中の位置情報のトラッキングをする場合、「Recreation」のプランが月額34.95ドルから加入できます。位置情報のトラッキングをしないばあい「Safety」で十分でこの場合は月額14.95ドルから加入できます。

緊急時に捜索や救助が必要な場合はGEOSがそのアレンジを行い、そのためのプランを用意しているという仕組みになっています。詳細の料金プランもWebサイトにあります。年家電、10万ドルまでで、1件の最大費用によって料金が異なります。1件の最大が10万ドルのプランでも年額29.95ドルから加入する事ができます。

JMTなど街から離れた場所を長期にわたって歩く場合、こうした機器を持っていると安心です。大けがをして行動不能になっても救助を受けられる可能性が高いので値段を考えれば持参する方が良いと言えます。

携帯電話は?

日本の山では比較的待ちに近いので携帯電話が通じる場所はかなりあるようです。そうした意味で、携帯電話は通信手段の一つだと言えます。ただし、送信出力は200mWと小さく、中継局に届かないと通信はできません。そうした、状態では、InReachやアマチュア無線の方が緊急時の連絡には有利になります。
アメリカでは、国土が広く場所によっては街から離れるため、トレールでは携帯電話が通じないエリアがかなり存在します。一般の幹線道路でも、街から外れた場所では圏外になることもあります。そうした事を考えると、InReachやアマチュア無線などの通信手段を確保する事が重要だと言えます。ただし、見通しの良い場所、山頂や尾根筋などは携帯電話の通じるところは結構あります。例としては、Mt.Whitneyの頂上や、Mt.ShastaのHelen Lakeのキャンプサイトなどは、携帯電話を使う事ができました。

免許不要のトランシーバーはグループ内の連絡用

これは、グループ間の連絡用と考えた方が無難です。免許がいらない分、通信のやり方などに精通したオペレータが期待できないので非常時の通信をスムーズに行うのも難しい可能性が高いです。ただし、近隣のグループとの情報交換には使える可能性もあります。

アマチュア無線も強力な通信手段です!

InReachの捜索や救助のプランの存在を除いて考えると、アマチュア無線は十分に実用になる通信手段として使う事ができます。

特にアメリカでは、アマチュア無線は非常時のバックアップの通信網として考えられているので、通信のやり方に精通したオペレータが多数いる事や、中継局などを整備しているため、アウトドアからでも利用価値が高くなっています。移動用の通信機器としては最も大きな出力も扱えるため、長距離通信も可能になるなど信頼性も高くなっています。

登山者やハイカーの間で緊急通信の為の周波数と時間が設定されていて、その周波数を利用できます。

  • 周波数は146.520MHz
  • 午前7時から午後7時まで3時間ごとに5分間(4分間は緊急メッセージの為の受信、以降は情報交換などに使用)
一応この暗黙の決まりがありますが、どれくらいの人が聞いているかは文章中にもありますが、疑問です。(参照元


より利用価値が高そうなのがAPRS(Automatic Packet Responding System)です。
アメリカでは、144.39MHz、日本では144.62/144.66MHzが使われています。この周波数に位置情報を付加したメッセージ(Packet)を送る仕組みです。この周波数で中継局がメッセージをリレーしてインターネットに送る仕組みになっています。中継局(Digipeter / I-Gate)に到達できれば、インターネットを経由してE-Mailや携帯電話などアマチュア無線局以外にメッセージも送る事が可能です。位置情報も付加しているので、インターネットから発信者の位置をトラックする事も可能です。

また近隣のハイカーや登山者がAPRSを利用していれば中継局を介さなくても直接メッセージのやり取りが可能になるので、別途、通信する周波数(チャネル)を設定して直接話すことも可能なので、ルート状況などを交換する事もできます。

樹林帯や谷間などでは通信可能の地域が制限される事もありますが、見通しのきく山頂や尾根筋、峠などでは中継局に到達できる可能性は高く、利用価値が高いと言えます。

このように、アマチュア無線は免許が必要ですが、アウトドアでの利用価値は高く、資格を取る価値は大きいと言えます。特に国土の広いアメリカでは日本ほど携帯電話の利用価値が山の中では少ないので、持っていると便利です。InReachはテキストメッセージだけですが、近隣のハイカーや登山者と話ができるのも大きな利点です。

特に、数日程度の短いハイキングでは、維持費用が殆どかからないアマチュア無線は利用価値が高いと言えます。日本では手続きが面倒な中国製トランシーバー(数千円で購入可能)もアメリカでは問題なく使えるので、検討の余地は高いと思います。



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