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賢い登山方法 (3) ~心拍数の決め方は?

急な登りは辛い物です!

前回は、心拍数を目安にペースを決められればバテにくいペースをつかむ事ができそうだという事を書きました。今回は、その心拍数をどう決めていくかを考えてみたいと思います。

まずは、一般論です

この手の情報を求めてインターネットを検索すると、多く目にする手法が次に述べるような物です。

まずは、「最大心拍数」というのを使っています。これは、ある人の最大の心拍数で、非常に強い運動をした時に、心拍数が上がり続けるわけではなく、ある点で上がらなくなる心拍数の事です。これは、単純な話をしてしまえば、運動強度を上げて行って限界に達するまで行って心拍数を測定すればわかるわけですが、ある意味この手の運動は場合によっては非常に危険な場合があるので、私は、専門化の指導なしでは行うべきではないと思います。そこで、よく目にする数式が

目安として「220-(年齢)」が1分あたりの最大心拍数になるという物です。つまり、例えば年齢40歳ならば、「220-40=180」で毎分180回程度というわけです。これもかなりいい加減な物で、個人差もありますし、運動習慣がある人と無い人でも違いがあるようで、誤差はかなり多いと思います。私の場合も、年齢が47歳ですが、過去のトレーニングのログを見ても、「220-47=173」というわけですが、限界まで追い込んだ運動をしていなくても、185~190回程度には何回も行っているのでそれほど正確な値だとは思っていません。

とりあえずは、この「最大心拍数」がわかったとして、先日したLTに近い心拍数が、一般的には最大心拍数の60~70%程度と言われています。

これを前日の数式に当てはめると、私の場合は、173回の60~70%ですと、104~121回あたりがLT相当の心拍数という事になります。実際の185~190回が最大心拍数として、111~133回という事になります。それでは、上限の値を見て、毎分133回という運動は自分にとってどんな感じかというと、これは相当楽な運動という事になります。これは、せいぜい速足で歩くか極めておそいジョギングに相当する運動で、私の感覚からはLT相当ではないと思います。実際に2~3時間は継続できる運動という事でも毎分150回程度ではないかと思います。これは、上限の190回を最大心拍数としても、80%に近い値という事になります。実際の最大心拍数は190回よりも高いのかもしれませんが、最近は余り追い込むような運動をしていないので何ともいえません。

私の場合は、計算上の値は低い方に出ていますので、このペースで歩いてもバテル事は余りないと思いますが、場合によっては高く出る方もいると思います。その場合は、この心拍数でも「辛い」事もありうるわけです。

ではどうすればいいか?

では、実践編という事になりますが、この辺は予めお断りしておきますが、あくまで私の経験的な物によるもので、実践はご自分で判断されて実施してください。場合によっては医師のアドバイスも求める事をお勧めします。特に、心臓などに持病がある方気をつけてください。

まずは、仮の値を決めます。

(1)運動時のデータがある程度ある方はそれを優先させて設定します。
私の場合は、最大心拍数はとりあえずおいておいて、実際に運動をしている経験から毎分150~160回あたりが自分のLT相当値と推測しています。つまる、この心拍数の運動の強度ならば数時間に渡って運動を継続できると考えているわけです。
(2)運動時のデータが無い方はとりあえず前述の数式による最大心拍数推定値から60%程度を仮の値とします。

それから実際に試してみます。

まずは、その心拍数に達する運動をします。まずは家の周りのでいいので、適当にコースを見つけて普通は早歩き、ジョギング程度の運動のはずですから、徐々にペースを上げて行きます。心拍数が仮の値に近づいたら、心拍数が設定値に近い数になるようにペースを調整します。

この時点で、息が上がって、体が辛いようでしたら、その心拍数は高すぎると言う事で、少しづつペースを落として、楽に運動できる心拍数を探します。よく言われる表現は、「会話が出来る程度」と書かれている事が多いですが、先日ブログに頂いたアドバイスでは、「鼻呼吸」ができる程度という表現も頂きました。まずは、その心拍数を見つけてみてください。

そして次のステップとして、短いハイキングから、その心拍数で実践してみてください。

 
 最近の私のトレーニング中の心拍数

参考までに、最近の私のトレーニングの心拍数を例として出してみます。左側が平均の心拍数で右側がそのトレーニング中の最大心拍数です。トレーニングの内容は、約10kmのジョギングで最近は左足の調子が悪いのでだいたい、70分くらいをかけてゆっくり目のペースで最後はややスピードを上げています。途中ちょっとした上り坂もあるのでそれなりに心拍数を上がっているわけです。
まずは、平均を見ると、ほぼ毎分160回前後であるということです。これは、最後にペースを上げたり上り坂で心拍数が上がっている部分も含んでいますので、やや高めだと考えられます。
最大心拍数は、完全に追い込まない状態で、ペースを上げて終わるだけでも、ほぼ180回を上回る値ですが、最大心拍数を計算に使っているわけではないのであくまで参考データです。ただし、「220-(年齢)」の数値も単純には使えないということはお判りになるかと思います。

とりあえず、心拍数毎分150~160回 ならば、少なくても1時間はそれほど苦しくなく走りきれるという事です。

次に、昨年Mt.Whitney(California州最高峰)を登った時の私の心拍数の推移です。これは、第一日目のデータで、登山口(標高約2550m)からキャンプ地、Trail Camp(標高約3700m)に登ったときのものです。この時は、前述の推定LT心拍数毎分160回を越えないようにして登りました。

昨年、Mt. Whitneyを登った時の心拍数の推移

途中3回ほど大きな休憩をしています。これは、最初に心拍数を毎分160回を越えたあたりで、まだ余裕があるので少し160回を越える心拍数で行動した後、徐々に苦しくなってきたので早めに休憩を入れました。休憩後は意識的に毎分160回を超えないように歩きました。それでも時折立ち止まって呼吸を整える場面が何回かあるのが判るかと思います。再び体が辛くなってきて、休憩を入れています。その後は160回よりやや低い心拍数を意識してペースを調整して歩いていますので、立ち止まる機会は無い事がわかるかと思います。その後目的地がある程度近づいてきたところで、最後の休憩を入れて、その後は最後という事もあって、再び毎分160回を上限にして上りきっています。

このデータを見ると、私の場合毎分160回の心拍数というのは、恐らくLT相当値を超えていると考えるのが妥当です。その後、毎分155回前後に最大数を調整したら、立ち止まる必要が無くなった子とを考えれば、このあたりが恐らくLT相当値かそれよりやや高い心拍数と推定できます。
この値は通常のトレーニングのデータとも一致します。

これから言える事は、LT値よりやや高い数値を上限にして登ったとしても、行動時間がこの例のようにせいぜい4時間程度ならば、上手に休憩を取れば概ねやや高い心拍数で歩いてもバテル事はないと言う事ができるかと思います。同じコースを過去に何度か歩いていますが、ある時は、体力的にも充実していたので、これよりもさらに高い心拍数で歩き通しましたが、実際はかなりバテました。

恐らく、LT相当値以下というペースは相当に「遅く感じる」ペースだと思います。ただし、そのペースを維持できれば、おそらく「バテ」を感じる事は殆どなく、登れるのではと考えられます。私の場合普段マラソンのトレーニングを行っているので、多少これを上回ったとしても、余り辛く感じる事はありませんが、心拍数である程度ペースを客観的観点から制限する効果は大きいと思います。

さらにこの次の日のデータで、この日はTrail Campから頂上(標高4421m)を往復して、さらに登山口まで下山する行程の実働約10時間弱のデータです。(横軸のスケールが違います、念のため!)

 
第2日目のデータ
この日は、大方の荷物はテントに残して最低限の装備で頂上を往復した後、再び荷物をまとめて、下山います。荷物が軽い事とペースは高山病の症状を悪化させないために余裕を持って、毎分140回程度を上限にして前日よりもゆっくりとしたペースで登っています。頂上に着く直前は最後という事で気合を入れてこの上限を無視して登ったので一次的に心拍数が上がっています。また帰路の短い上り返しでも、短いので一気に上っているので途中2箇所ほど、心拍数が上がっていますが後は下りという事もあって概ね毎分130~140回で歩いています。この日は行動時間は長かったですが、余り苦しい事はなく、むしろ長い下りで足に負担がかかり別な要因で疲れを感じました。
(スケールが違うので判りにくいですが、休憩の箇所は心拍数が落ち込んでいるので判ります。)

つまり、心拍数を抑えても「疲れない」わけではありません。筋肉は長時間使い続ければそれなりに疲労しますし、ダメージも受けます。従って、いくら心拍数を抑えても無限に動けるわけではありません。しかしながら、バテて座り込んだり、長時間の回復の為の休憩を取るような自体はある程度避けられるとという考え方です。

しかしながら、こうした、客観的データは登山中のいろいろな判断をする上で有用であると考えられます。例えば休憩をしても、心拍数が高止まりするような事態になったとすれば、それはある意味危険信号と取るべきだという事です。特に、ある程度の標高では高山病のリスクがついて回るわけですが、体調やその他の影響もあるので、「前回大丈夫だったから今回も大丈夫」というわけではなく、そうした客観的な要素を鑑みて、今回は前回とは違う個とを自覚する意味は大きいと言う事です。

初回に、トレーニングの必要性について、自分の体を知る事は大事と書いたかと思いますが、自分の心拍数に対する感覚は大事だと思います。安静時の心拍数はいくつで、運動後はどれくらいで心拍数が落ちていくかとか、ゆっくり歩いたときは、ジョギングは、速く走った時はなどと、大体の自分の心拍数を把握していると、高いところで歩いていてもこの数値だから、平地ではこれくらい運動と同じという感覚は大事だと思います。

今回のポイント

  •  まずは、仮のLT相当値を設定して、その心拍数が妥当かどうか何回か試してみる。
  • ある程度感覚がつかめたら、実際の登山やハイキングをその心拍数を上限にして実施してみる。
  • 慣れてきたら、行動時間やコースによって多少の幅を持たせてみる

とにかく、最近は、リアルタイムで心拍数を計測してそれを記録できるランニングウォッチなども比較的安価で手に入るようになったので、それらを有効活用して、より効果的なペースを見つけ出して登山する事は、いろいろな意味で有効な手段だと考えられます。

(まだつづきます!)

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