なだらかなコースですが標高は富士山と同じくらい
先日は、パルスオキシメータについて紹介してみました。長期的な登山では体が高度のなじんでいく際の指標として使われているようで、利用価値は高いようです。
ここでは、普通の人が行う登山、せいぜい1~2泊程度の4000m前後の登山でどう使っていくかを考えてみたいと思います。実際問題として、標高3500m~4500mくらいの山と言うのは結構あるもので、その多くが1泊ないし2泊程度で登る事が可能で、場合によっては充分日帰り圏内だったりします。従って、一般の登山者、ハイカーでも行く機会が多いと考えられます。
こうしたケースでは、体が順化する前に、その登山自体が終わるという事になります。実際に、1~2日では、順化は難しいという事になります。
そうすると、一つには、体の限界に達する前にそれに近い事を察知して、下山するなり対策を講じるというのが一つの使い方だと思います。私も、元々はそういう目的で購入しました。ところが、その判断基準となるSPO2値をどう設定するかは結構難しいし、単に数値の読みからだけでは体の状態を正しく把握しているとは限らないという事を経験的に学びました。
実際に、急激に数値が下がる状況では、体に変調が起きている事を自覚するべきだと思いますが、その値が幾つなのかは非常に難しいと言えると思います。
そうした、基準にするのに私が有効だと考えるのは、これまで書いてきた心拍数の推移の方がいいと考えています。
パルスオキシメータは短期の登山では役に立たないか?
では、パルスオキシメータは短期の登山ではあまり有効ではないか、という事になります。
結論からすると、私は有効な使い方はあると感じています。
前回も書いたとおり、ある程度の標高になるとSPO2の測定値は一般に余り安定して計れなくなる傾向があるように思えます。このある程度の標高はどれくらいかというのは、はっきりは判りませんが、何となく感覚として高度障害の症状が出始めるような高度なんだと思います。という事で当然個人差がありますが、私の場合は、だいたい標高3500mあたりではないかと思っています。
この段階では一般に酷い症状ではないのですが、何となく体の調子と言うか、感じが変わってくる事が多いように思えます。例えば、何となくペースが上がらなくなるとかそんな微妙な変化です。
私が考えるに、恐らく普通に呼吸しているだけではSPO2値を維持できなくなってくる状況なんだと思います。そうなると、一つには呼吸数を多くして、心拍数も上げて体に酸素が行き渡るような体の反応が起きてくるわけです。人間とは面白い物で、こうした測定機器をつけて計ろうとすると、どうしても意識するようで、なかなか自然な呼吸とかにはならないのだと思います。そうして、呼吸が乱れるために、数値が変わるのではと私は思っています。
ところで、安価なパルスオキシメータの測定値は一般に誤差も大きいと言われているので、利用する際は絶対的な数値より相対的に数値が高いのか、低いのかを基準に使うのが良いと思われるので、ここでは相対的に測定値が高いか、低いかでの話にします。
いずれにしても、SPO2値は低いより、高い方が良い事は明白です。そうなると、呼吸で測定値が上下するという事は、それを逆手に取れば、高い値を維持するような「呼吸法」が存在する事になります。インターネットなどで、高所登山に関する検索をすると、呼吸の仕方を意識する事というような記述が多く見られます。ただし、表現の仕方はいろいろで、なかなかピンとこないのが実情ではないでしょうか?そこで、パルスオキシメータを使って、数値が高くなる呼吸の仕方を見つけて「練習」するわけです。これで、相対的に高い測定値を維持する事ができれば、高山病の影響を最小限にする事も可能になるのでは、という考え方です。如何ですか?
もちろん、ペースが上がると心拍数が上昇して、当然呼吸数も増えてきます。この状況では、呼吸を意識してもなかなか改善する事は難しくなりますが、これまで説明してきたように、ペースを落とす事で、心拍数をある程度コントロールできれば、意識した呼吸法で、SPO2値を意図的に高く保つ事はある程度可能です。このような方法を取る事で、高山病の影響をある程度抑えて登山を行う事は可能であると思うわけです。
考慮しなければいけない事は?
では、こうした方法を取って登山を続けるために考えなければいけない事も見ておきましょう。
この方法は悪く言えば「ごまかして」登るわけですから、自分の体調の変化には常に気を配る必要があります。一つは、「特別な」呼吸が維持できなければ、症状が急に悪化する可能性があるということです。例えば維持が出来なくなる例に、「睡眠」があります。睡眠中は「意識して」呼吸をコントロールできない上に、一般に呼吸数自体が低下するので、SPO2値が下がりやすい傾向にあると言えます。従って、ある程度高い標高で泊まる必要がある場合、若干余裕のある標高で泊まる必要があるということです。「特別な」呼吸法がSPO2値をある程度の値で保つ必要がある場合、睡眠を取る事によって、症状が悪化する事を留意するべきです。
この判断基準として、止まって休息を取っている時の心拍数の変化が役に立つと思います。この心拍数が、高止まりしたり、直ぐに心拍数が低下して来ない場合は、体はある意味の酸欠状態を是正する反応を起している考えるべきで、その場所よりは標高を下げた場所に泊まった方が症状を悪化させずに済むと考えるべきです。
また、心拍数が高くなくても、体に明らかな自覚症状が出ている場合は、その症状の程度によっては、数値にこだわるのではなく、体の警告と思って、何かしらの対策を取る必要があると思います。
心拍数やSPO2値はあくまで目安である事を留意すべきだと思います。
上手く行った例
私の場合、昨年7月にWhite Mountainにハイキングに行ってきましたが、このハイキングではトレールヘッドが、富士山より少し低い標高で、そこまで車で行けるため、余り体がなじむ過程を経ずに行動を始めるため、通常より自覚症状が強く出ていました。前夜の徹夜のドライブもあって余り調子が良いわけではありませんでした。しかしながら、心拍数はさほど高くはなく、行動を始める前で毎分80回を少し越える程度でした。(私の安静時の心拍数は毎分55回くらいです)
そんなわけで、歩き始めは意図的にスピードを上げずに意識的にゆっくり歩くようにして、心拍数を低く保ちました、大体毎分130~140回位で歩きました。
加えて、呼吸方法も、意識的に息を吐き出す動作をするようにして、SPO2値も相対的に高く保てるような感じで歩きました。それでも、頂上付近では、いつもよりは酷い自覚症状が出て、手の指が浮腫んでいるのが判るほどでした。その時は、あとほんのわずかで頂上でしたので、呼吸を意識しながらそのまま登って、無事に降りました。
このときは、恐らく呼吸を意識して行動した事が大きく影響したと思っています。特に浮腫みがでてからは、下りでも意識して呼吸をするようにしたので、症状の悪化は最小限ですんだと思います。
如何でしょうか?参考になったでしょうか?
このWhite Mountainですがカリフォルニア州では3番目に高い山で、4300mを越える標高ですが、コースはなだらかで、日帰り圏内の山ですので是非行ってみてください。往復で20km強程度です。
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