パルスオキシメーター
心拍数の話をしてきましたが、ここで少し別の話をしようと思います。
最近は、登山と言うよりはハイキング主体で楽しんでいますが、アメリカに来てから、標高4000mを越える山に登る機会が寄り身近になりました。日本では一番高い山が富士山で、標高は3776mで、次に高い山が北岳で3092mです。そんなわけで、高山病・高度障害が顕著に現れる山は富士山ぐらいですが、ここアメリカには手軽に登れる山でも結構あります。ヨーロッパにも比較的簡単に登れる4000mを越える山は結構あります。
実際は高度障害の症状は標高3000m以下でも現れるようですが、私の場合はあまり気になった事はありませんでした。
そして、ある程度高い標高の山を登ろうと思うと、この高度障害の影響を考える必要が出てきます。先日までの話で、私は心拍数を把握する事でこの辺もある程度対応できるのではと最近は考えていますが、別の観点の話も紹介しておきます。
高度障害、高山病とは?
よく、高いところは「酸素が薄い」という感じで感覚的に言われていますが、実際にはどういうことかもう少し詳しく見てみる事にします。もう少し詳しい事を言えば、「単位体積中の酸素濃度が下がる」という事です。判りやすくいうと、高いところに行くと気圧が下がるわけで、車などで山に登っていくと、御菓子のパッケージが異常に膨らんでいたり、風船が大きくなったりという現象が起きます。
これは、中の気体の分子の量が変わるわけではなく、外の圧力とのバランスで体積だけが変わっているだけです。つまり、海に近いところで風船を膨らませて風船を結んで閉じると、その時点でその風船の中に含まれる、酸素や二酸化炭素の量は決まります。これを標高の高い所に持っていくと、外気圧の関係で風船の体積は大きくなります。ところが、中の酸素の量は同じです。
それでは、ここで人間の肺について考えてみます。肺の大きさ(容量)は基本的に同じです。肺は密閉されているわけではないので標高の高いところに行っても基本的に膨らむわけではありません。そうすると、高いところでは同じ体積中の酸素の濃度が下がるので、一回の呼吸で取り込む事のできる酸素量が減るという事になります。
そうすると、特に運動などで大量の酸素が必要になった時に、ある時点で充分な酸素が取り込めなくなると、体に支障が出る事になります。これが、高山病、高度障害と呼ばれる症状です。
ところが、低酸素下の状態に長期的に滞在すると、人間の体が順応反応によって、より効率的に酸素を取り込んで循環させられるように変化してきます。血中のヘモグロビンなどの増加がその一例です。よく、高地トレーニングというのを耳にすると思いますが、こうした体の変化を促して、スポーツ特に有酸素系の運動であるマラソンなどの競技パフォーマンスを向上させようとする物です。ただし、変化が実感できるまでには、数日を要すると考えられています。
パルスオキシメーター
ここで今日の話題のパルスオキシメータですが、これは元々は医療用として開発された機器で、血液中の動脈血中酸素飽和度(SPO2) をはかる機械です。これは、光学的に血液を見る機械で、特に採血などをしないで、測定可能であるという点で非常に便利な機械です。よく病院などで使われて指先にクリップして使う機械です。
十数年前に、ヒマラヤ登山をされる山の先輩に見せて頂いてこの機械の存在をしりました。このSPO2値を計る事で、高度順化の目安に出来るという事で、医療以外の応用でした。当時は非常に高価な医療機器でしたので一般の登山者が気軽に買える物ではありませんでしたが、最近では安価な物が手に入るようになって、概ね数十ドルから100ドル程度で手に入るようになりました。もちろん、正規の医療用の物とは精度などの点で違いもありますが、登山などで使うには実用上あまり大きな問題ではないようです。アメリカではアウトドアショップや薬局で買う事ができますし、Amazonなどでも扱っています。
SPO2値
この機器を使って、SPO2値を普段生活している標高の場所で計ると、ほぼ100%に近い数字が出るはずです。一般に誤差を入れても95%以上の数値になっているようです。これが、標高の高いところに行くと徐々に低下して行くので、この数値を目安に、高度順化の程度を測ろうというのがこの機器を登山に応用しようという考え方です。
ところが、この数値の決め方がなかなか難しく、インターネットでいろいろ調べましたが、なかなか判りやすい指標がないというのが、私の率直な感想です。インターネットの情報によれば、一般的な標高では、90%を下回ると酸素吸入をする目安になるとも言われているようですが、例えば90%で登山に問題かと言うと恐らく大多数の方が90%を切った状態で登山したとしても殆どの場合、異常も感じないでしょうし、極普通の感じで動けると考えられます。私は医者ではありませんので、これに対する長期的な体への影響はわかりませんし、大丈夫だとも断言できません。
しかしながら、過去の経験から言うとなんら問題もなく行動できるというレベルです。実際に私の場合70%台でも登山をした経験もあります。
という事で、幾つになったらだめとか、いいとかいう判断は個人差やほかの要因もあって簡単には決められないというのが私の経験からいう感想です。
おそらく、ヒマラヤ登山などある程度長期にわたって高所に滞在して行うような登山では、相対値を
見る事である程度、各個人の高度順化の度合いの目安にする事ができるのだと思います。そういう使い方は一つの利用方法のひとつだと思います。
次回は、一般の方々にも身近な1~2日の短期的な登山でどのように応用していけるかを考えたいと思います。
(つづく)
*よろしければ、ブログに表示される広告のクリックにご協力ください。
(クリックだけで結構です!)
コメント
コメントを投稿